< 養生と経絡と癒し>

養生

貝原益軒(かいばらえきけん)の『養生訓』から学ぶ不調に負けない健康習慣。

季節の変わり目の気温や湿度の変化になかなかついていけない時ってありますよね?
そこで大事なのが普段の生活の習慣。
江戸時代の儒学者、
貝原益軒の「養生訓』にはそんな急激な気温や湿度の変化に負けない教えが
詰まっています。

以下養生訓より抜粋


養生とは。

 より健康的な体になるために日々の生活習慣と慣習を『心がける』考え方で、『変化』に備える術です。変化といえば、気候の変化であったり環境など、そして加齢等、あげだすときりがないぐらい私たちにはつきまとっている現実です。その変化に対応する力を養い、調整力を持っていく事が『日々の養生』という事です。健康とは、「氣(活動の基礎となるエネルギー)』『血(血液)』『水(血液以外の体液)』が全身を巡っている状態を健康であると教えています。


心を穏やかに保つ。

 『気を和らげて平かにする事が体の巡りをよくする要であると述べています。平静な心でいる事で、怒りの感情や欲を抑え、心配事の種が少なくなるように努力をする。その心を穏やかにする事で、変化に直面した時でも平常心を保つ事ができます。


深く呼吸を整える。

 単に経絡をおこなったり、経穴を刺激する事だけではなく、ただ一人の空間で静かに深く呼吸を整える事も大切さの一つです。例えば部屋でお香を焚く事も、とても贅沢な世界に入っていく事ができて、心を養うのに役立つと言えます。


腹八分目。睡眠は量よりも質。

 養生訓に繰り返しでてくる言葉は『腹八分目』です。胃腸に負担がかかるものを避けて食材をバランスよく食べる事が大事です。睡眠に関しても『早寝早起き』。長く眠っていると氣の循環が悪くなってしまいます。夜更かしも厳禁。午後十一時ぐらいから日付が変わるくらいまでには就寝をしないと精神が鎮まらず、良い睡眠が非れません。


ちょっと運動。

 軽い運動を習慣付ける事が大切な養生の一つです。家の中の小さな用事を家族に任せるのではなく出来る限り自分で動き、少しでも汗をかき血行をよくし、体内の老廃物を外に出す事が大事です。しかし、自分の体力に応じた『適度』な運動でないと『動も静も度を過ごすといけない』と養生訓では記されています。


人生の三楽。

 人として生まれたならば、三つの楽しみを知らないのは悲しい事かもしれません。一つはいい行いをして自尊心を高める。二つは健康で心配事がないこと。三つ目は長生きをして、人生を十分に楽しむことです。この三つを行うには、養生の教えをよく守ることであり、たとえ、お金持ちであっても、後ろめたい気持ちをもっていたり、病気がちであったり、短命な人生であるのなら、この三つの楽しみは得られないと養生訓には記されています。


気を養う法。

 騒がず、あわてず、ゆとりをもち、怒ったりせず、大声を上げず、穏やかな気持ちでいて、不平をいって怒らず、悲しみを少なくし、どうすることもできない失敗をくやまず、過失があっても一度反省すれば二度とくやまず、ただ運命にしたがい生きていくことが、心気を養う方法です。


五思。

 食事をするときに考えなければいけないことが5つあります。一つは、誰から食事を与えられているかです。父や上司、兄弟や親類、あるいは他人から与えられているかもしれません。それらの人には感謝の気持ちを忘れてはいけないのです。自力で食物を得ているものも、自分の住んでいる国に対して恩を忘れてはいけません。二つは、食物は農民が作り出してくれたことを感謝しないといけません。自分で食物を作り出していないものは、特にそうであるとおもいます。三つは、自分が何も貢献をしていないときに食事を取ることがあるときは、とても幸福であることを忘れてはいけません。四つは、自分の食事よりも貧しい食事をしている人がいることを忘れてはいけません。自分が餓死しないで生きていることを感謝しないといけないと養生訓では教えています。五つは、昔の人は米、麦、粟、豆、黍を食べることができないために草木の実や根や葉を食べていたのに、今ではそれらを食べることができることを感謝しないといけません。また、火を使い温かい食事をとれることも感謝しないといけないとおもいます。味もよく、胃腸にもやさしい食事がとれることも感謝しないといけない。(なんか、すごく古い時代の話です。)今の時代はとてもいいものです。これらの五つのうち、二つくらいでいいから、食事をするときは思い出してほしいものです。


薬の効用。

 かなり昔(大化改新または、大和朝廷の時代より以前)には、日本には茶というものは存在しなかったようです。中世(江戸時代より前くらい。)になり、中国から渡ってきました。その後に、人々が味わい日用欠くことができない大切なものとなりました。茶は、精神を落ちつかせ眠気をさますものです。昔の中国の医者たちは、人の体から油を抜き出すとして茶は良くないと言っていましたが、でも、今では朝から晩までお茶を飲んでいますが、身体に悪い影響はないようです。しかし、だからといって一度にたくさんの茶を飲むのは控えないといけません。抹茶は、茶の成分が強く、煎茶は、茶の葉を煎ったり煮たりするのでマイルドです。日頃は煎茶を飲むのがいいかもしれません。食事のあとに、熱い茶を飲み、消化を促しましょう。茶に塩を入れてはいけません。腎臓を悪くします。空腹のときは、胃腸を悪くしますので、茶を飲んではいけません。濃い茶を多く飲むと気分を沈ませますので濃すぎるお茶は避けましょう。中国の茶は、煮ないで作るので成分が強いです。虚弱な人や病弱の人は、新茶を飲んではいけません。眼病、情緒不安、下血、嘔吐、下痢などが起こりやすいからと記されています。


按摩と指圧。

 一日に一回は、全身に按摩や指圧を受けるのがいいとおもいます。頭の頂上中心部、頭のまわり、両眉の外側、眉じり、鼻柱のわき、耳の内側、耳の後ろの順に指圧し、耳の後ろから、首筋の左右をもむ。左側を右手で、右側を左手でもむ。
次に、両肩、肘の関節、腕、手の十指をひねらせる。背中を押さえてたたかせる。腰や腎臓のある部分をなでさせる。胸、両乳、腹部を何回もなでさせる。
次に、両股、両膝、脛の表裏(膝の下の部分)、足のくるぶし、足の甲、足の十指、足の心(足の裏側の土踏まずの中心)などを両手でなで、ひねらせる。
これらは、自分で行うのもよいです。


髪をすき 歯をたたく。

 櫛やブラシで髪をすくのは多い方がいいです。気持ちを落ち着かせるからです。
歯は、何度もかちかちと噛み合わせるのがよい。歯を丈夫にし虫歯になりにくくなります。両手をすりあわせて熱を持たせ、その手で両目に当てて眼を暖めるのもよいです。視力がよくなり眼病予防にもなります。髪の生え際から額と顔とを上下になで下ろすのもよいです。。
両手を顔に当てると、気持ちを落ち着かせ顔色がよくなります。左右の中指で鼻の両側を何度もなでて、両耳の付け根をよくなでるのも心を落ち着かせます。


香の効用。
 いろいろな香が鼻を楽しませるのは、いろいろな味が口を楽しませるのと同じでです。。香りによっては、心の平静を助け、落ち着かない心を静める事ができます。悪臭を消し、けがれを取り除き神明に通じる。(宗教的なものに、香が使われるのもわかる気がする。)
ひまがあれば静かな部屋に座り、香を焚いて黙座るのは、風雅な趣が増す。これも養生の一つであろう。


経絡とは

水と血と氣のながれ。
経絡と経穴のスムーズな流れがもたらす相乗効果の健康管理。


経絡とは

東洋医学では、気血が流れる道筋として、経絡というものを考えています。主な経絡は内蔵(臓腑)に繋がっていて、また全身を巡っています。この経絡の中には気血が流れていると考えられています。
経絡中を気血が滞りなくスムーズに流れているとき、身体は正常な機能が営まれていると考えられています。従って、身体のどこかに異常があれば、その病態と関連する経絡のどこかに異常反応が起こります。この経絡上の反応点のことを経穴(つぼ)といい、一般にいわれるつぼとは、この経穴のことを指します。経絡は、肺・心・肝・脾・腎・三焦の六臓と、大腸・小腸・胆・膀胱・心包の六腑にそれぞれ1本ずつ繋がっていて、さらに正中線上の表裏に1本づつ、合計で14本の正経と呼ばれる経絡が、身体を巡っています。


経絡と経穴の関係

経絡と経穴(つぼ)の関係は、よく全国に広がる鉄道網に例えられます。線路が経絡、駅が経穴(つぼ)、そして線路を走る電車が気血です。経絡同士も鉄道網のように互いに連絡しており、電車に相当する気血は、路線を運行する電車のように全身を巡っています。
ところが、電車が緊急停止すると鉄道網全体の運行に支障が出てくるように、何らかの原因で気血の流れが停滞してしまうと、経絡のネットワークも異常を起こし、身体のバランスが崩れて身体のあちらこちらに様々な症状が現れてきます。


経穴の反応

皆さんもマッサージなどを受けて感覚的にご存じかも知れませんが、経絡上の経穴(つぼ)は、圧すると痛みを感じたり、気持ちよかったり、硬くて塊のようなものを感じたり、柔らかくてへこんでしまったり、色々な反応を示します。東洋医学的な判断を行うときはこの反応を利用して、原穴診、背候診、経絡診など、どの経絡のどの経穴(つぼ)に異常な反応があるかを調べます。
日本では、胃の痛みに効く経穴(つぼ)とか便秘に効く経穴(つぼ)とか、病気に対してそれぞれ対応する経穴(つぼ)を刺激し行うのが一般的です。しかし、中国で行われている最新の中医学では、経穴(つぼ)の色々な働き(=機能)について研究されています。一つ一つのツボが身体に対してどのような作用や効果を現すのかを研究し、この考え方によって、1+1だったツボの効果が、3倍にも5倍にも相乗効果が現れるようになります。


癒し

能動的な癒しと、受動的な癒し。
交感神経と副交感神経の関係。


『無』になる事でのデトックス。

何かに没頭する。ストレスを感じ、心身になんらかの不調を感じた時に、自らの行動で、何らかの行動を能動的に行い、嫌な事を忘れるという方法があります。スポーツが好きな方はランニングをしたり、水泳をしたり。それらの能動的な行動は交感神経を刺激し、一時的に興奮状態になります。その後、クールダウンする事で副交感神経の働きがおこなわれ、リラックスする事ができます。何かに没頭し、それに集中する事による癒しです。


自分へのご褒美。

普段はする事ができない事であっても、自分へのご褒美的な事として、温泉やスパにいったり、エステで自分磨きをする事も癒しの一つになります。現実的な生活から、ちょっと贅沢な事を体験する事により、その為にまたがんばろうと思う事もでき、悪い『気』を良い『氣』へと自分自身で変換させていく事ができます。


芳香浴。

アロマによるリラックスは直接脳に刺激がいきます。最近の研究ではアロマによる香りが認知症予防などにも効果があると報告されています。あまりきつい香りは好ましくありませんが、ご自分にあった香りをほんの少しだけティッシュ等に含ませて風の通る窓際等におかれるだけでも気分が変わります。
また、お線香も心が落ち着きます。これもあまり香りの強いものを選ばずに、ご自分にあった、好きな香りを選ばれて、静かにその香りを楽しまれるのも癒やしの効果があると思われています。


瞑想。

座禅なども一つの癒しとなりますが、わざわざ社寺に出向かなくても家で一人でできます。座禅の基本である『何かを得るのではく全てを捨てる』。これは心のデトックスとなります。最初のうちはなかなか『無』になる事は難しいかもしれませんが、ただただ何も考えずに、ただただ心鎮める事が大事です。


音楽を聴く。泣く。

あえて『聞く』を『聴く』と書かせていただきました。音楽をただ流しているのではなく、自分が感動でき、涙をながせる曲を選んでみてください。怒りや哀しみの涙は興奮状態になり交感神経が刺激されますが、感動の涙は副交感神経が刺激され心がどんどん落ち着いていきます。この場合、音楽だけでなく、映画でも同じような効果があらわれます。


自分らしく、自分の方法で、自分のために。

人それぞれ。それぞれの方が本当に癒やされる方法は千差万別です。一番大事なのは、自分らしく、自分の方法を見つける事であるとおもいます。例えばたった一杯のお茶を炒れるにしても、お湯を沸かすときからそれに集中し、一つ一つを大事に行動し、優しく急須に茶葉を入れ、そして優しくお湯を注ぐ。そして時間をおいて気に入った湯呑みに茶を注ぐ。そしてそれを静かにいただく。
好きなコーヒーを豆からミルで手びきをする。そして丁寧にペーパーフィルターにいれたコーヒーの粉にお湯をかける。癒やしを求める時に、あえて一挙一動に集中する。集中するという事で他の事は忘れています。たったそれだけの事であっても、日常の慌ただしさの中に埋もれずに生きていく事の術なのかもしれません。